Project
WOW20th Anniversary Movie Logo
Concept
時代や技術と共に変化し、表現を多様化してきたWOWは2017年で20周年を迎えます。20年という節目を前に、新プロジェクトWOW20が始動。「しつらえ」を主題とした、12の作品を発表します。しつらえとは、適切なものを具体化すること、的確に確実に表現すること、そして心地よい体験をもたらすこと。相手を思慮し、日本の美意識が含まれた静かなる行為を、日本や世界の社会で伝えていく決意を表明します。
WOWでは作品の発表に先駆け、WOW20のロゴを使った映像作品を発表する『WOW20 ムービーロゴコンペティション』を開催しました。課題はWOW20を表現し、ロゴを最後に30秒以内で完結させること。

WOW20th Anniversary Movie Logo社内コンペティション Vol.1
社内投票で特に人気の高かった、近藤樹(こんどう たつき)の作品『Glittering Particles』をご紹介します。 近藤樹 / こんどう たつき(Technical Director / Designer) 『iQOS PR EVENT Installation』『SLUSH ASIA 2015 ‘360° DOME MOVIE / Installation / VI’』『片岡鶴太郎 四季彩花』『CASIO TR』『INFINITY LINE』に参加。 ー『Glittering Particles』のコンセプトは何ですか? 光によって、輝きを放つものを映像化しようと思ったのが最初のきっかけです。人や物事に対して「輝く」という言葉をよく使いますよね。僕らの周りには人やアイデア、思惑など、いろいろな原石があります。原石が輝くためには光が必要で、光をどのように当てるかによって、原石の輝き方が変わると思うんです。たくさんのプロジェクトや考え方に合った、光の当て方をしつらえる(まとめる)というのが、WOWの担っている役割であり、存在意義なのかなと思ったんです。 ー制作過程を教えてください。 2、3日で構想して、金箔をイメージした金粉が水中をきれいにたゆたうよう、1週間かけてモックを作りました。洗濯のりと水を混ぜた液体を作ったり、金粉の大きさや色などを検証したりして、一番キラキラする理想の状態を模索しました。そこから1週間かけて、撮影用に60センチの水槽に変換し、それと同時に、プロジェクターで光を投影したときのシミュレーションも行っています。カット割を決めていたのですが、実際にやってみたらうまくいかないことも多くありました。斜め上から撮りすぎると、フレアがきれいじゃなかったとか。さらに調整と撮影、編集を10日程繰り返し行って完成しました。光はモバイルプロジェクター・エルモBOXiで投影したのですが、どこの面から光を当てるかだけでも、金粉の印象が変わるんです。下からの光が特に幻想的に見えたので、水槽は床がガラス製のものにして、正面から撮影しています。 ー作品のみどころは、どんなところですか? 金粉がきれいに舞うよう、洗濯のりを混ぜて濃度を調整したことですね。水だけだとストンと落ちてしまうので、水と洗濯のりの配分をいくつか試しました。水を循環させるためにポンプを入れているので、きれいに対流しているところを見てもらいたいです。 ー苦労したことはありますか? 自宅で撮影したのですが、部屋の掃除が大変でした…。ポンプを一度止めてから片側を抜いて、次の作業を考えていたら、サイフォンの原理で水がビシャーっと流れて、部屋が水浸しになりました。床に養生をしていましたが、ひどい目にあいましたね(笑)。あと、金粉の扱いも大変で、バイクや車で使用する塗料用のラメを使ったら、家も手も爪の間もラメだらけになりました。 ーコンペでは、唯一の実写作品になりましたが、どうして実写にしようと思ったんですか? 実験をしたり、着想を現実化したりするのが好きだし、得意だと思っているので「実写で勝負したい」という気持ちが一番にありました。好きなことをやっていたから続けられたし、完成したんだと思います。 ー着想は、どんなところから得られたんですか ? 粉に光を当てるアイデアは、コンペの前からやってみたかったことでした。考えの元になったことのひとつは、担当した『iQOS PR EVENT Installation』で行った、エントランスのインスタレーションからなんです。スモークを焚いた空間にプロジェクターで光を当て、形を投影させていました。実体がないから触れないけど、立体物ができていたので、それをもっとキラキラさせた上品なものを作れないかなと思っていました。WOW20では、webサイトが金色をベースにしていたので、金箔が舞って、光が当たってキラキラしていたらきれいだろうな、と考えて作り始めました。 ー通常のフローで一番好きな作業は何ですか? 企画を練っているときですね。「こんなことをやりたいけど、果たしてできるのかな?」と、構想しているときが一番楽しいです。 ー今後、やってみたいことはありますか? 今回の作品を、人が中に入れるくらいの巨大版でやりたいです。真っ暗で、だだっ広い空間に銀箔を降らせて、照明やプロジェクターの光で同じことをやってみたいなと。社内のプロデューサーに話したら「それはなかなか厳しいですね」と一蹴されてしまいました(笑)。いずれにしても、空間やインスタレーションが好きなので、大きい規模の作品をやってみたいと思っています。 <次回はWOW20をカウントアップで表現した、阿部伸吾による『W20W』のインタビューをお届けします。> 「WOW20 Official Website 」

WOW20th Anniversary Movie Logo 社内コンペティション Vol.2
Vol.2 は、阿部伸吾(あべ しんご)による『W20W』をご紹介します。 阿部伸吾 / あべ しんご(Director / Designer) 「The Lady Gaga Experience」「Connected Colors」「Audi TT Landing, Japan」「MOËT & CHANDON The Great Gatsby event movie」などに参加。 ー『W20W』のコンセプトを教えてください。 WOWが1997年に設立してからの20年を、1から20までカウントアップする構成にしました。僕はまだ10年しか在籍していないですが、WOWは毎年チャレンジングなことに取り組み、結果を出しながらも新しい物を作っていく、開拓精神の強さを感じていたんです。WOWに対して「次は何をするんだろう」と思ってもらえているように、映像にもそんなわくわく感が出せたらいいなと思い、数字が上がる度にどんどん変化していく内容にしました。この「変化し続ける」というのが、今回の大きなテーマになっています。 ー着想はどんなところから得ましたか? 「しつらえ」というテーマやwebサイトが「和」の雰囲気だったので、数字を和柄やパターンとして扱い、変化させることからスタートしました。職人さんは気が狂いそうなほど細かいパターンを、几帳面に並べて美しい和柄を作り出します。その美しさがWOW20の雰囲気にしっくりくるな、と思ったんです。WOWは変化を求めて新しいことに挑んでいく反面、丁寧なものづくりをする職人気質な一面を併せ持っています。その両面が映像から見えてきたら嬉しいな、と思いながら作りました。細かいパターンが集まっているシーンから始まり、どんどん展開していくところが今回の着想であり、映像の構造上でのテーマですね。 ーみどころを教えてください。 初めは何を表しているか分からないけれど「数字かな?」「あ、カウントアップしているんだ」というのがだんだん分かって、18か19になったとき「そういうことだったのか!」って理解できると思うんです。その流れでWOW20のロゴを出せば、20という数字が明快に映るだろうと、見せ方を意識しました。最初はなるべく数字に見えないようにして、最後に理解してもらえれば、見終わった後に「0から1って、どうなっていたんだっけ?」ともう一度見返して、二度楽しんでもらえたらいいな、と思ったんです。そして、20の数字が消えた後に25、30という未来へ向かう数字を使うことによって「これからも突き抜けるぜ!」という思いを表しています。数字はこっそり入れているので、ぜひ探してみてください。 ー時間が少ない中での作業になったと思いますが、特に時間を掛けた作業はどの部分ですか? 数字の移り変わりは何パターンか次の展開を考えてから、どれにするかを選ぶのですが、ワンシーンごとに止まりながら丁寧にやりました。特にカウント割りは「このパターンだと想像の範囲だし、こっちだとあまりにも奇抜過ぎるからどうしよう…」と、その都度お風呂に入りながらじっくり悩みましたね。 ー特にこだわった点を教えてください。 次に起こる出来事が、見る人の想像するストーリーの斜め上を超えて、展開していく作りにしています。想像以上のことが連続すると、頭がすっきりして気持ちのいい状態が続くんですよ。WOWが次の一年を刻むときは、昨年の延長でありつつも、期待をうまいこと裏切り、新しいことに挑戦する。そして結果を出しながら、丁寧に作るというのがWOWらしさでもあるので、映像そのものの態度が、WOWの態度でもあったらいいなと思っています。 <次回はロボットと歌舞伎が一体化し、デザイナーのオリジナリティが溢れた作品をご紹介します。>

WOW20th Anniversary Movie Logo 社内コンペティション Vol.3
Vol.3 は、金原朋哉(きんぱら ともや)による『ROBO-KABUKI』を、インタビューと併せてご紹介します。 金原朋哉 / きんぱら ともや(Visual Designer) 『Max Man & Maya Man』『Panasonic 4K Movie』『BIOHAZARD® 6 オープニング映像』などに参加。 ー『ROBO-KABUKI』の着想を教えてください。 短時間で制作しなくてはいけなかったのと、コンペで勝てるものを狙うため、クオリティが高く、すでに出来上がっているものを再利用しようと思ったんです。その頃、ちょうど仕事をしていたのが『Max Man & Maya Man』でした。3DソフトのAutodesk 3ds Max®とAutodesk Maya®の最新バージョンの発表に合わせたキャンペーン企画で、3Dプリント用のデータを公開していたんです。それを今回利用し、WOW20のテーマである「和」と、Max Manを組み合わせたキャラクターを考えました。「和」といえば、真っ先に思い浮かぶのが歌舞伎。『Panasonic 4K Movie』でメカニックなキャラクターを作ったときは『ジョジョの奇妙な冒険』をテーマにしていたんですが、クリエイティブディレクターに「どうしても歌舞伎っぽくなるよね。」と指摘されたことがあるんです。自分では無意識でしたが歌舞伎が好きみたいなので、今回はド直球にテーマにしています。 ー歌舞伎のどんなところに惹かれて、作品に落とし込みましたか? 見得(※1)とか、あからさまに格好つけた感じが好きなんです。市川海老蔵さんの動画を見て、いろいろなお辞儀や見得切りを参考にしました。ただ、どうやって30秒にまとめるかは悩みどころだったので、デザイナーの先輩に相談しました。「ずっと首を回せばいいんじゃない?」と言われ、「何それ!おもしろい!」と、定番の見得切りと、もらったアイデアを使わせてもらいました。 ※1 見得 場面や登場人物の気持ちが盛り上がったとき、ポーズを作って静止する演技。 ーロボットはどのように作っていったんですか? ほとんどは元のデータの使い回しで、パーツに色を付けて整えています。それだけだと味気ないので、和装を着せて、毛振り(※2)のために髪を付けました。この髪、実はリーゼントになっているんですよ。「ロック!」な雰囲気が好きで、WOWOW新春IDを作った際も、2015年は馬のたてがみをリーゼントに。2013年では、だるまに稲妻をつけてパンク系にしました。 あと、尺があまり取れませんでしたが、右手を2にして「20周年、おめでとうございます!」ってやっています(笑)。 ー苦労したことはありますか? アニメーションですかね。見得切りが結構難しかったんですよ。最初に映像資料を見て、ポーズを決めるんです。30フレームごとにキーを打って、あとは微調整。全部手付けの作業なのと、いい感じに首と腰を回すのがなかなか大変で…。人間ではあり得ないぐらいのスピードで回転させているんですが、速くなるにつれて腰を落としたり、足も徐々に広がったりと、動作にはかなりこだわっています。 ー通常のフローの中で、好きな作業はありますか? 僕は特殊だと思うんですが、仕組みを作っていくのが好きなんです。アニメーションをつける時、いちいち「パーツごとにキーフレームを打って動かす」より、「スライダーひとつ動かせば、一度にアニメーションを変えられる」という設定を作る。それで、他のデザイナーさんにファイルを渡して「スライダーを動かせば、こうなりますから」って自慢するんです(笑)。キーを打つ作業は時間が掛かる上に、修正が入ると全てのキーを直さなければいけないけれど、あらかじめ設定しておけば、すぐに直せるんですよ。 ※2 毛振り(けふり) 獅子が頭の長い毛を振る動作。 次回は、VJでも大盛況!格闘ゲームがモチーフとなった作品をご紹介します。

WOW20th Anniversary Movie Logo 社内コンペティション Vol.4
Vol.4となる今回は、柴田大平(しばた だいへい)による『20th Anniversary Hadoken』をご紹介します。 柴田大平 / しばた だいへい(Director / Designer) 『TAKAO 599 MUSEUM(Guide)(Nature Wall)』『MTV GENERIC TITLES PACKAGE ‘HYPER FANTASTICS’』『デザインあ 思ってたんとちがう』『TNGA – Toyota New Global Architecture –』などに参加。 ー着想はどんなところから得ましたか? これはもともとVJで使っていた「Media Fighter」というネタを、WOW20のためにアップデートしたものなんです。『ストリートファイターV』が発売された当時、YouTuberが配信している動画を見て、「ゲームの映像を、VJのネタとして使ってみたらおもしろそうだな」と思ったのがきっかけでした。格闘ゲームでは、待機している間のキャラクターの動きや、ステージ背景の観客の動きなど、いたるところでループ映像が使われています。VJもループ映像で作ることが多いので、アイデアとして共通しているものがあると感じていました。Media Fighterは、BRDGというレーベルが主催するイベント(VRDG)や、Media Ambition Tokyo 2016で使っていて、お客さんから「すごく楽しかったです!」と話し掛けてもらえたりもしました。 ーVJをするようになったきっかけは? 大学生の時に遊びで始めて、社会人になってからはほとんどやっていませんでしたね。BRDGのMVを制作したことから、BRDGが主催するイベント「VRDG」にVJとして呼ばれ、出演する機会が増えました。FEMM(『L.C.S』のMVを、柴田がディレクターとして担当)のVJではMVでの素材を元にしたり、音楽ゲームをネタにしたりしました。 ー『20th Anniversary Hadoken』のみどころを教えてください。 3Dのキャラクターを手付けで細かく動きをつけたり、キャラクターに服を着せて服の挙動をちゃんとシミュレーションしたりと、地味にこだわっています。また、戦っているステージは渋谷の交差点なんですが、電光掲示板をアニメーションさせるなど、一見目立たない部分も細かく作り込んでいます。 ー主人公の顔に付いている御札は何ですか? キョンシーの御札です。僕がキョンシー世代で、キョンシーが好きだったので付けました。映画を見た当時は幼かったので、怖かった記憶だけが残っています(笑)。 ー苦労したことはありますか? 20周年のおめでたさを、どれだけ派手にやるかを意識しつつ、20という数字にどうやって繋げるかで悩みました。実際に作り始めてみたら、手作業で動きを付けるような細かい作業が多く、想像していたよりも作るのが大変でしたね。 ー好きな作業、もしくは好きな時間はどんな時ですか? 考えている時と作っている時が好きです。作る時と言っても、範囲が広すぎるけれど(笑)。カフェで企画や演出を考えたり、他のデザイナーが帰った後、一人で残ってちまちまと作業したりするのが楽しいです。アイデアを考える時は、ノートにひたすら絵を書いたり、テーマから思いつく単語などをたくさん書き起こして、後から取捨選択したりします。あと、編集の作業も好きです。特にAdobe Premiereのサクサク感が気に入っています。After Effectsなどは、プレビューするのにレンダリングが終わるまで待たなければいけないけれど、Adobe Premiereはリアルタイムで再生できるので、試行錯誤しやすいし、ストレスなく編集できて楽しいです。

WOW20th Anniversary Movie Logo 社内コンペティション Vol.5
Vol.5 は、大賀頌太(おおがしょうた)による『R-G-B-C-M-Y-K』をご紹介します。 大賀頌太 / おおが しょうた(Director / Designer) 『Mercedes-Benz Fashion Week』『JIMMY CHOO JAPAN EXCLUSIVE STAR STUDS MADE-TO-ORDER』『TBS連続ドラマ 永沢君 オープニングタイトル』などに参加。 ー『R-G-B-C-M-Y-K』のコンセプトを教えてください。 WOWは「ビジュアルデザインスタジオ」なので、静止画も映像もやっていく上で一番重要な「色」をテーマに、RGBとCMYKの表現に挑戦しました。シンプルな薄いディスクが転がり、最終的にWOW20のロゴにある、黒い丸に落ち着くようにしています。 ー着想はどんなところから得ましたか? 舞台や学校に置いてある照明で、赤と青のセロハンが重なったとき、光の色が紫になっていたことを思い出したんです。それを光ではなく、影で再現してみたのが今回の試みでした。現実の事象をCGで表現するのは可能なことですが、本当にそのまま再現できるかは、実際にやってみるまで分かりませんでした。この映像は、ほとんどレンダリングしたままの状態にも関わらず、影の色の重なりがそのまま再現できました。 ーみどころを教えてください。 影の色の重なりです。物体は重なると、CMYKと同じように黒くなっていきます。ディスクが転がることで、偶然生まれた色の重なりや、混ざり方を見てもらいたいです。 ー苦労した点は? 後半の転がるシーンは、それぞれのディスクが当たってしまわないよう、手付けでどう転がるのかを書き、それに合わせて転がるようにしているんです。手付けの作業は、少しでも修正すると別の場所がズレてしまうため、カメラとの兼ね合いを考えながら調整していきました。CGの作業としては一番やることが多かったので、大変でしたね。 ーディスクには質感が感じられますね。 フラットで、デコボコや傷のないディスクだと、CG上ではくるくると回っていても、「転がる」ではなく「滑る」ように見えてしまうんです。質感があるように見せられれば解決できるだろうと思い、ディスク自体にグラデーションを加えました。そのお陰で回転しているように見え、透明感のある質感も出すことができました。 実は冒頭のカットが最後に作ったカットで、個人的には一番上手くできた部分なんです。もっと時間があれば、最初に作ったカットも同じくらい上手くできたかなと。なので、見る人によっては、カットごとにクオリティの差を感じるかもしれませんね。 ー通常のフローで、好きな作業はありますか? 作業よりも、企画を考えている方が好きですね。特に企画を作る上でのリサーチは、自分がやりたいことを想像しながら、「どうしようかな」と考えられるので、一番好きです。 ーどんなリサーチをしているんですか? テーマを決め、そのテーマにまつわる単語を調べます。ただ一つ、自分が過去にやった「同じネタを使い回さないこと」をルールとして決めています。たまに自分の首を絞めるときもありますが(笑)。あと、リファレンスでは動画ではなく、静止画を引っ張ってくることが多いですね。 ー静止画はどのように集めているんですか? 「Pinterst(ピンタレスト)」を使って集めています。ある程度ピンをすれば、自動で類似画像が出てくるので、すごく助かっています。仕事でも重宝していますが、日常的に気になる物があったらピンをしていますね。昔は「Tumblr(タンブラー)」で調べ物をしていたんですが、デザイン系がたくさんあったのに、おもしろい画像ばかりになってしまい、調べ物としては使えなくなってしまったんです。そのタイミングで、PinterstでもGIFがアップされるようになったので、移行することにしました。当時Tumblrで、友人達と隔週で1日GIFをアップする「GIF a day」というのを更新していたんです。もともとは「JPG a day」や「PNG a day」「Motion a day」という、既存のものを真似て始めましたが、一年程続けました。これをきっかけにGIFが好きになって、今でもGIFはチェックしています。GIFだと発祥元を辿れないので、先入観なく楽しめるんです。

WOW20th Anniversary Movie Logo 社内コンペティション Vol.6
Vol.6 は、中間耕平(なかまこうへい)による『屏風』をご紹介します。 中間耕平 / なかまこうへい(Visual Art Director) WOWでは、『NHK スポーツ番組オープニングムービー』『ISSEY MIYAKE “3D Steam Stretch” Concept Movie』『LEXUS BY THE BEAUTY』『aikuchi – Concept Movie』『SHIZUKU by BLUEVOX!』などに参加。 自主作品『DIFFUSION』『CYCLE』『MAKIN’ MOVES』は、VimeoのStaff Picksに選出されるなど、海外を中心に話題を呼んだ。 ー『屏風』のコンセプトを教えてください。 モチーフは「屏風」です。WOW20ロゴのお題の中に、「『祝い』を軸としてハレを表現したい」とあったので、「ハレとケ」という言葉から屏風を連想しました。屏風は昔から、お祝いごとがあった時に日常の空間を隔て、ハレとケを分けるためのもの。WOW20のwebサイトも「和」をテーマにしていることもあったので、日本の和を意識して屏風を選びました。「ハレとケ」は、金と黒の二色に分け隔てています。あと冒頭の屏風は、山折り谷折りで分かりやすくギザギザにして、「W」が二つ並んでいるようにしたんです。俯瞰のカットでは、ひし形でOを表して、「WOW」を意識的に入れました。 ▲冒頭に登場する、俯瞰のカット。ギザギザが「W」、ひし形が「O」で「WOW」を表した。 ー「和」がテーマの中にも、独自のこだわりを感じます。 和をテーマにはするけれど、和のモチーフをそのまま使うのは避けたかったんです。いわゆる花鳥風月のような、動植物をベタでそのまま使うのではなく。自分がやりたいことも加えようと思い、アルゴリズムを使いました。例えば、屏風の骨組みのあとに浮かび上がる、赤い点のパターン。これはボロノイという、『aikuchi – Concept Movie』でも使用した、いわゆる距離の取り方です。全ての点が、均等にお互いの距離を保とうとするアルゴリズムで、点のちょうど中間を取って線で繋いでいくと、こんな模様になるんです。この模様が木に見えるのではないか、と考えて使ってみました。ボロノイも、その後の屏風が金色に塗られていくパターンも、軌跡が和柄模様に見えそうだなと思い、パーティクルの軌跡を線にしています。 このような法則だけを使って、生物や植物などの具体的なモチーフを使わずに、和を表現しました。日本人は和に見慣れているので、赤や金や黒といった色や記号、唐草模様などの模様を見ただけで、それが和だと理解できる。でももし、外国人がそれらを見た時に、日本人と同様に和を感じるのだろうか。そんな問いかけも、この作品に込めています。 ー作品のみどころを教えてください。 実物の屏風の中の絵はアニメーションしない。それが動いたらおもしろいな、という空想がありました。それと、絶対に透明でもないですよね。本来は仕切るものだから、向こう側が透けて見えてしまったら意味がないんです。二律背反というか、アンチテーゼな部分が、この屏風にはあります。 ハーフスクリーンみたいなものでアニメーションして、逆側からも見える屏風を作ってみてもおもしろそうですよね。実際に作ってみたらどうなるか分かりませんが、実在したらおもしろいと思います。 ー苦労した点はありますか? 制作期間は一週間くらいで、ベタでやりました。30秒フルCGって、結構大変なんですよね。構想は「屏風を使おう」とか、大体を決めておいて、考えながら作っていました。しっかり決めていると、決めた画が良くなくても、使わなくちゃいけなくなるので。通常の作品作りでは、コンテとか、約束事があるので、そういう仕事の進め方はいけないんですけどね。大人数でCGを作ったり、撮影をしたりする場合、こういった進め方は難しいと思います。でも、自分だけでディレクションもCGも行う場合、考えながら作っていった方がより良い画、おもしろい作品を作り出せていると実感しています。 ー通常のフローの中で、好きな作業はありますか? 実は、最初のキャリアは編集室のアシスタントから始まりました。だからもともと、映像を編集するのが好きなんです。僕自身は画を描かないから、作りたい画を夜の内にマシンに計算させます。そして朝になって、書き出されたレンダリング画像を繋いでいく。その繋いでいく作業がワクワクしますね。考えているときも楽しいけれど、それよりもだんだん形になっていく過程の方が好きかな。やっぱり想像している時よりも、「あ、できてきたな」って思えるので。もちろん良い結果だったら楽しいですが、良くないときは絶望的です(笑)。
Epilogue
参加人数25名による22本の作品は、通常の作品とは異なり、デザイナーひとりひとりの個性が爆発。今後展開されるWOW20作品において、新たな多様性を予感させる結果となりました。