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WOW20th Anniversary Movie Logo 社内コンペティション Vol.6
『屏風』 by 中間耕平
Vol.6 は、中間耕平(なかまこうへい)による『屏風』をご紹介します。
中間耕平 / なかまこうへい(Visual Art Director)
WOWでは、『NHK スポーツ番組オープニングムービー』『ISSEY MIYAKE “3D Steam Stretch” Concept Movie』『LEXUS BY THE BEAUTY』『aikuchi – Concept Movie』『SHIZUKU by BLUEVOX!』などに参加。 自主作品『DIFFUSION』『CYCLE』『MAKIN’ MOVES』は、VimeoのStaff Picksに選出されるなど、海外を中心に話題を呼んだ。
ー『屏風』のコンセプトを教えてください。
モチーフは「屏風」です。WOW20ロゴのお題の中に、「『祝い』を軸としてハレを表現したい」とあったので、「ハレとケ」という言葉から屏風を連想しました。屏風は昔から、お祝いごとがあった時に日常の空間を隔て、ハレとケを分けるためのもの。WOW20のwebサイトも「和」をテーマにしていることもあったので、日本の和を意識して屏風を選びました。「ハレとケ」は、金と黒の二色に分け隔てています。あと冒頭の屏風は、山折り谷折りで分かりやすくギザギザにして、「W」が二つ並んでいるようにしたんです。俯瞰のカットでは、ひし形でOを表して、「WOW」を意識的に入れました。
▲冒頭に登場する、俯瞰のカット。ギザギザが「W」、ひし形が「O」で「WOW」を表した。
ー「和」がテーマの中にも、独自のこだわりを感じます。
和をテーマにはするけれど、和のモチーフをそのまま使うのは避けたかったんです。いわゆる花鳥風月のような、動植物をベタでそのまま使うのではなく。自分がやりたいことも加えようと思い、アルゴリズムを使いました。例えば、屏風の骨組みのあとに浮かび上がる、赤い点のパターン。これはボロノイという、『aikuchi – Concept Movie』でも使用した、いわゆる距離の取り方です。全ての点が、均等にお互いの距離を保とうとするアルゴリズムで、点のちょうど中間を取って線で繋いでいくと、こんな模様になるんです。この模様が木に見えるのではないか、と考えて使ってみました。ボロノイも、その後の屏風が金色に塗られていくパターンも、軌跡が和柄模様に見えそうだなと思い、パーティクルの軌跡を線にしています。
このような法則だけを使って、生物や植物などの具体的なモチーフを使わずに、和を表現しました。日本人は和に見慣れているので、赤や金や黒といった色や記号、唐草模様などの模様を見ただけで、それが和だと理解できる。でももし、外国人がそれらを見た時に、日本人と同様に和を感じるのだろうか。そんな問いかけも、この作品に込めています。
ー作品のみどころを教えてください。
実物の屏風の中の絵はアニメーションしない。それが動いたらおもしろいな、という空想がありました。それと、絶対に透明でもないですよね。本来は仕切るものだから、向こう側が透けて見えてしまったら意味がないんです。二律背反というか、アンチテーゼな部分が、この屏風にはあります。 ハーフスクリーンみたいなものでアニメーションして、逆側からも見える屏風を作ってみてもおもしろそうですよね。実際に作ってみたらどうなるか分かりませんが、実在したらおもしろいと思います。
ー苦労した点はありますか?
制作期間は一週間くらいで、ベタでやりました。30秒フルCGって、結構大変なんですよね。構想は「屏風を使おう」とか、大体を決めておいて、考えながら作っていました。しっかり決めていると、決めた画が良くなくても、使わなくちゃいけなくなるので。通常の作品作りでは、コンテとか、約束事があるので、そういう仕事の進め方はいけないんですけどね。大人数でCGを作ったり、撮影をしたりする場合、こういった進め方は難しいと思います。でも、自分だけでディレクションもCGも行う場合、考えながら作っていった方がより良い画、おもしろい作品を作り出せていると実感しています。
ー通常のフローの中で、好きな作業はありますか?
実は、最初のキャリアは編集室のアシスタントから始まりました。だからもともと、映像を編集するのが好きなんです。僕自身は画を描かないから、作りたい画を夜の内にマシンに計算させます。そして朝になって、書き出されたレンダリング画像を繋いでいく。その繋いでいく作業がワクワクしますね。考えているときも楽しいけれど、それよりもだんだん形になっていく過程の方が好きかな。やっぱり想像している時よりも、「あ、できてきたな」って思えるので。もちろん良い結果だったら楽しいですが、良くないときは絶望的です(笑)。
END