Project > Works

モーショングラフィックス座談会Vol. 5

Round-table

参加メンバー:鹿野護/工藤薫​​/中路琢磨/中間耕平/柴田大平/北畠遼
 

360度コンテンツのエンタメ性と実験性

 

鹿野
Vol.4 の座談会で、「エンタメ系」と「実験系」の二つを軸に置いて、今回のプロジェクトを進めていくことになりました。じゃあ、エンタメの企画ってどんなものがあるかな?
 

中路
音と連動させる、サウンドの企画が多そうですね。
 

中間
「旅」や「移動」をする企画も多い印象です。
 

中路
Oculusは、ジェットコースターのような動きや速さを感じられるシチュエーションに、音、風、匂いなどをプラスすれば、一気にリアリティが増しますよね。
 

北畠
宇宙空間の企画だと、特にそれが感じられそうです。海の中にダイブして、深く潜っていくのも分かりやすそうですね。
 

中間
動きによってリアルを感じる、ということですよね。やっぱり、ジェットコースターと同じなのかな。
 

中路
世界が上下反転するだけで、三半規管がおかしくなりますしね。
 

柴田
俺はVR(バーチャルリアリティ)の映像を作ったことがないから、完成図が想像しづらいけど、やってみたら面白そうなものはいっぱいありますよね。とりあえず、みんなで作ってみたらいいんじゃないですか?
 

中間
VR効果が強いとか、気持ち悪いとか、体験してみないと分からないこともあるから、簡単なプロトタイプを作って、どう感じるのかはやってみてもよさそうですね。
 

中路
視点が移動する映像がいいのか、その場に留まる方がいいのか、そういったことも大きく影響するから検証してみたいね。
 

中間
実験映像作家のトニー・ヒルって知っていますか?昔ちょっと流行ったんですけど、「 A Short History of Wheel」(※1)のようにカメラをリグに取り付けて、180度ぐるっと回転させていくと、どんどん違う場面に切り替わるんですよ。土の中に潜ったら、反対側の世界に出てくる、っていうのも面白いかも。 (※1:ヨーロッパを代表する映像作家、トニー・ヒルによる実験映画。邦題は「車輪の歴史」。車輪が回転するたびに、時系の変化が展開される。)
 

北畠
360度コンテンツではないですが、360度の実写映像で、ブランコに乗っている自分の足が映り、空に向かって360度回転すると、周りの世界が変わっている、というのもありましたね。
 

鹿野
ちょっと違うけど、カイリー・ミノーグのMV「 Come Into My World」も、360度映像だったよね。
 

工藤
ミシェル・ゴンドリーが、監督している作品ですよね。モーションコントロールカメラで撮影して、一周するごとに新しいカイリー・ミノーグが増え、最終的には4人になっている、という。
 

中間
一つの空間の中に異なる時間軸が混ざっているっていうのは面白そう。360度を時計みたいに考えて、24時間の一日の景色が360度、きれいに繋がっているとか。もしくは180度で変えて、前を見たら昼間、後ろを見たら夜の世界が広がっている、とかね。
 


 

柴田
ワイプとかでも、不思議な空間が作られそう。
 

工藤
360度を何かに置き換えるって、面白いですね。
 

中間
ある地点で一周したら、場所が変わるとか。場所でもよさそうだね。そういえば、ダンサーの企画が面白いな、と思ったんだよ。
 

北畠
一人のダンサーの助走から着地までの一連の動きを、フレームごとにキャプチャで撮ってつなぎ合わせた、連続写真のような世界観ですよね。フレームごとにスライスして、フレームとフレームの間に入り込んだら、時間の軌跡を見渡せそうですね。(参照: stroboscopic motion
 

中間
一瞬を時間に置き換えたら、どう見えるのかな。
 

中路
確かに、どこでも自由に見渡せるから、人が見たくなるような空間じゃないとだめですよね。
 

中間
そうそう。視点はこちらから決めないで、流れで見たらズラーッてなっているのが、ちょっといいなって思いました。
 

鹿野
昔の絵巻物って、横が時間軸になっていますよね。異時同図といって、異なる時間を同じ場面に描いているんです。今はこういった図法を見かけないですが、やってみたら面白いかもしれない。同じ時間が全て、その場に組み込まれていて、見方によってはその時間を捉えていく、というのは確かにある。
 

柴田
(全企画を指して)これ…。今、どの企画にするか、決めるのが難しいですね。
 

工藤
最初に話が出たように、とりあえず作ってみますか?
 

鹿野
そうですね。最初から作り込まずに、ワイヤーフレームや簡単なシェーディングをした映像でも、空間の捉え方はできるので、面白そうなものからやっていきましょうか。
 

柴田
企画書だけ見て、面白くなさそうなものでも、作ってみたら面白いかもしれないですしね。逆もあると思いますし。
 

中路
じゃあ簡単な実験として、誰かと組んでやっていきましょう。
 

鹿野
どの企画をやるかは、このメンバーで「面白い」と思った企画に、一人6票投票しましょうか。まずは老若男女、誰が見ても分かるエンタメ性の高い「エンタメ系」。すごく実験的なことにトライする「実験系」。この二軸でアイデアを分類して、その中で投票数の多いものを試してみましょう。あと、「実験系」とは別に、投票の多かった「簡単な実験系」も同時進行で進めていきましょうか。
 

今回で、モーショングラフィックス座談会は終了となります。今後は、座談会で選ばれた企画の制作段階に移行します。今後の展開にもご注目ください。
 

(座談会後記 Vol. 1につづく)

<<Beyond Motion Graphics