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モーショングラフィックス座談会Vol. 2

Round-table

参加メンバー:鹿野護 / 工藤薫 / 中路琢磨 / 森脇大輔 / 中間耕平 / 柴田大平 / 北畠遼 / 近藤樹
 

新しい映像体験と表現

 

鹿野
このあたりで、ちょっと話題を変えてみましょう。 これまで皆さんは色々な映像を見てきたし、実際に作ってきた。特にWOWはコンピューターグラフィックスが多いので、ソフトウェアのテクノロジーとは密接な現場だと言えます。 そうした中で、映像を見るハードウェアに大きな変化が生まれてきた。直感的に皆さんとしては、これから作りたい映像ってどんなものなんでしょうか?
 

北畠
僕としては、まず大前提として、技術的なところから着想するというよりも、やはり確固たる世界観を構築していきたいというのがあります。そうした大きな世界を作り出して、その中で綿密に細かく、ディテールを詰めていく。先程(Vol.1で)見た映像の中でも、細かい文字の繊細な動き一つにも手を抜いていない。そうした映像作りのアプローチは大事かなと思います。
 

中路
確かにそれは重要ですよね。そうした考え方でいうと、ヘッドマウントディスプレイのような、いわゆる全天球型映像のデバイス用に作り込んでいくのは、とても大変ですよね。これまでのディスプレイのように矩形でトリミングされているわけではないから。 作り込む範囲が、見る人を取り囲む360度全体に及ぶ。視界は見る人に委ねられるからストーリーの展開にも工夫がいるはず。
 

北畠
見る人がフォーカスするところを、映像のデザインとしてしっかりコントロールする必要がありそうですね。そこで見えているだろう部分を徹底的に作り込むという。
 

中間
全天球型の映像は、映像演出のあり方を大きく変える可能性がありますよね。映像のカットをどうするとか、構図とか、フレーミング、ライティングは、あくまでも四角いスクリーンありきの手法だと思うので。360度視野全体を、ストーリーとは関係ないところも含めて見せていく。
 

中路
視野をいかにコントロールするかはとても重要になりそう。見る人の身体的な振る舞いを、映像側で想定しながら作っていくような。何よりもフレームアウトができないですよね。ようするに、スクリーンの外側で見えない部分をいかにデザインするかって、演出においてとても重要ですよね。たとえば長い龍の映像を作るとして、これまでは一部分を見せることによって、巨大さや強大さを表現できていたので、全天球型ではそうもいかない。
 


 

工藤
ヘッドマウントディスプレイ(Oculus)のコンテンツでベネツィアの川を船で移動するというものがあるんですけど、臨場感がものすごいんです。見るという感覚ではなくて、まさに船に「乗っている」という感覚。見るのではなく体験している感覚ですね。
 

近藤
僕も先日同じような体験をしました。僕の場合はヘッドマウントディスプレイではなく、プラネタリウムのような半球型のドーム状のスクリーンだったのですが、まさに感覚を支配されているような気持ちになりました。全体を見回しながら鑑賞していると、姿勢がグラグラしてきて、5秒も立っていられない。
 

柴田
個人的にはそういう映像は、気持ち悪くなってしまってダメですね。気持ち悪くなるのが分かっているから、コンテンツの楽しさが伝わってこないというか。積極的に体験したいと思えないです。
 

工藤
自分も気持ち悪くなってしまいますね。とくにカメラが動いている映像は酔います。自分が意図していない動きはきつい。感覚と視界のズレのようなものが影響しているのかな。
 

中路
視界が完全に遮蔽されてしまうから、見るのに勇気はいる。でも気持ち悪くなる問題は、まだ演出方法が確立していないからというのもあるんじゃないかな。とにかく奥行きや没入感だけを高めようとして、カメラを強引に動かすものが多いから。そうじゃなくて、環境を作り込んでいくようなアプローチであれば、また違った体験になるような気がする。
 

北畠
見ている人のポジションをいかに保証するか、というのもあるのではないでしょうか。乗り物に乗っている設定を作り出して、視界の移動を見る人に予測させながら、ストーリーや世界観を展開していければ「見る不安」のようなものが減少すると思います。
 

中間
透過型のヘッドマウントディスプレイはまた違った可能性がありそうですよね。現実世界と仮想世界を組み合わせて表現できる。映像酔いも軽減されそうな気がします。それと、いずれはその透過度も映像側でコントロールできるようになるとしたら、最初は現実世界が見えているけど、次第に仮想世界に入り込んでいくような演出も可能ですよね。
 


 

中路
先程話しに出たドーム型のスクリーンも面白そうですよね。なかなか体験できる機会がないのですが、映像を投影する上でどんな特徴があるんでしょう。
 

近藤
じつはなかなか難しいんです。ドームに映像を投影するにはプロジェクターを使います。プロジェクターの映像ですから、環境が暗い場所で、明るい映像を投影できれば、はっきり鮮やかに映像が見えるわけです。しかしながらドーム型のスクリーンは、映像を投影するとドーム内で映像が照り返してしまうという問題があります。
 

中路
ということは、環境全体が明るくなってしまうということ?映像のコントラストが低くなる?
 

近藤
そうなんです。映像自体の明るさが環境に影響を及ぼして、映像のコントラストが下がってしまうというジレンマが発生してしまうんですね。プラネタリウムのように暗い映像がベースならいいのですが、通常の映像をそのまま投影してしまうと、どんどん光が回って、映像が白っぽく薄くなってしまいます。
 

一同
へぇ〜
 

鹿野
新しいデバイスは、可能性もある分、いろいろな問題も含んでいますよね。ただやはり四角形のフレームから解き放たれた映像は、我々にとって未知の世界だと改めて思いました。まだまだ映像の歴史は短いですから、これからどうなっていくのか不安な反面、非常に面白そうだなと思います。では今回はここまでにして、また次回により具体的にプロジェクトを進めていきましょう。
 

(Vol. 3につづく)

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