Concept

私たちの住む東北地方には、昔ながらのお祭りや郷土玩具、工芸品など、様々な文化が脈々と受け継がれています。日頃から私たちの身近にあるものですが、身近すぎるゆえにこれらがもつ歴史や意味について深く考える機会はあまりありません。しかし、長い歴史をもつこれらの製作過程や内包する世界観は、とても味わい深いものなのです。作品制作にあたり、私たちは郷土玩具をテーマに工房見学を始めとしたフィールドワークを通して伝統について学びました。POPPO展では、そこに自分たちのもつ表現技術と解釈を加えて作り上げた実験的な3つの作品を展示しました。

 

 

ぽっぽの森

お鷹ぽっぽを中心とした、笹野一刀彫という山形県米沢市笹野地区に伝わる木彫玩具をテーマにした体験型インスタレーション作品。冬は寒さが厳しく、雪と原料のコシアブラの木に覆われ、都からも遠い東北では、独自の工芸品が多く生まれました。そんな冬の東北に玩具の鳥たちは住んでいます。コシアブラをモチーフとしたマグネットを壁に積み重ねて行くと、様々な鳥が森の中からやってきます。

制作:齋藤勇樹/小形美希/高沢聖矢

 

 

YADORU

東北の湯治場を中心に発達した“こけし”。現在は鑑賞品の印象が強いこけしですが、元々は子どもの手遊び人形として親しまれていました。その絵柄には「五穀豊壌」や「子供の成長」などの願いがこめられています。人に見立てる依り代として、また祈りをこめた土産物として、人々はこけしにさまざまな想いをやどし、広めてきたのです。
カメラブースで顔を撮影するとこけしの中に入り込むことができます。

制作:佐藤宏樹/吉村篤/田中健二

 

 

 

ROKURO

ろくろ工芸がどのように作られるか知っていますか?東北地方では数多くの器、玩具、細工品が、ろくろによって木材から削り出され、世に生み出されてきました。この作品はそのろくろをモチーフに、自分で木材を切り抜き、ちょっと不思議な木工工芸品を作り出します。工芸品を作る工程にある、ろくろ挽きと絵付けを遊びながら体験し、東北の伝統工芸を改めて知ることができるインタラクティブ作品です。ディスプレイを操作して、貴方だけのろくろ工芸品を作ってみましょう。

制作:丸山紗綾香/中野雄太/菊池信也

 

 

最後に

こけしやお鷹ぽっぽなどの工芸品は、かつて子供の玩具として使われた歴史がありました。本作は伝統的な玩具の世界観をテーマとした作品であると同時に、私たちなりの新しい遊び方の模索でもあります。展示を通して普段とは少し違った角度で郷土玩具の世界にふれることで、地域に伝わる文化の奥深さを再発見するきっかけとなることを願っています。

山形ビエンナーレ2019