Project

Motion Modality / Layer

Concept

「映像と空間」「映像と物質」「映像と人」—。映像が建築や都市と一体化し、 自然現象に似た佇まいを持つ場所を創生するMotion Modality(モーションモダリティ)という概念・仕組みを考案。
 
2022年2月、恵比寿映像祭にて「Motion Modality / Layer」を制作・公開。

 

はじめに
「映像と空間」「映像と物質」「映像と人」—。映像が建築や都市と一体化し、 自然現象に似た佇まいを持った場所をつくりたいという思いから、映像によって空間の状態(=モード)を変化させる概念や仕組みを考案。これをMotion Modality(モーションモダリティ)と名付けた。

 

Motion Modalityにおける3つの特徴
Motion Modalityは3つの特徴を持つ。
 
1: 映像のような照明 / 照明のような映像
 
2: 映像にかたちを与える
 
3: 人、映像、空間のスケール感を揃える
 
これら3つの特徴は、空間における映像の新しいあり方や可能性を提示し、映像が空間を豊かにするための基本的な考えとなる。

 

1 | 映像のような照明、照明のような映像
街中の映像や照明を見渡すと、そこには人の目を引くために素早く変化するLED ビジョンや、木に巻き付けた派手なイルミネーションなど、自然界に存在しない強くギラギラした光を目にする。このような「強く発光し目に直接入る映像」から「物質を介して光が回り込む柔らかな映像」という新しい映像のあり方を考えた。

電気が一般化する前の時代。西洋ではキャンドルなど直接的な光が使われていたのに対し、日本では障子や行灯など、光源を隠して間接的に光を拡散させて使っていた。現代の都市にも、このような日本的な柔らかい光が必要ではないのか—。映像と照明はともに光を扱うが、 お互いの役割は異なってきた。しかし近年は機材の進化により、映像を建築照明のように使用したり、建築照明を映像のようにアニメーションさせたりと、2つの役割は混ざりつつある。

これからの新しい映像は、光を拡散/反射させ、その振る舞い自体を操作し、映像と照明両方の特徴を合わせ持つ仕組みが必要である。このような光は都市において既存の空間をより豊かにする可能性を有する。

 


 

2 | 映像にかたちを与える
プロジェクターやLEDディスプレイなど映像機材の進歩によって、かつてはTV画面の中に収まっていた映像は大型化し、プロジェクションマッピングやメディア・ ファサードなど、建築物や都市の一部を映像が作り出すまでにその用途やサイ ズは多様化した。「四角い平面の映像」から「自由な形の映像」という考えは、映像を表層的な装飾として使用するのではなく、映像を物質化して「かたち (Form)」を与え、環境の中に存在させる。

新しい映像のかたちは、自由で有機的な形状を有し、建築や都市に映像が溶け込み一体化するような特徴を持つと同時に、映像の多様化に呼応するようにそのかたちも多様性を持つ。
 
※メディア・ファサード : 建物の壁面にLEDを敷き詰めスクリーン化したファサード

 


 

3 | 空間演出としての映像
私たちの身の回りには、スマホで見る小さなサイズの映像から、屋外にある巨大な映像まで、その役割や場所、人数に応じて、大小様々な映像が存在する。(下図参照)

映像を作る際には、それぞれの媒体(メディア)に適した映像サイズの調整が必要である。スマホ画面で小気味よく光る映像も、巨大なスクリーンに投影すると目の前に雷が落ちたような激しい点滅が見る人を襲う場合がある。これは映像のスケール感の特性で、身体より大きな映像は山や雲と同じような風景のスケール感を持ち、激しい変化ではなくゆったりとした変化の方が心地が良い。

「画面の中の映像」から「風景のスケールを持つ映像」という考えは、映像の大小による特性を最適化し、人との相対的な関係性が主となる。映像の寸法であるpixcel(ピクセル)と、空間の寸法であるmm(ミリメートル)の2つの単位を揃え、ビット(情報)とアトム(物質)の間にあるギャップを埋めていくものである。

※スケール : ここでいうスケールは大きさ(=寸法)という意味で使用

 



 

Motion Modalityの位置づけ
Motion Modalityは、空間演出(Augment Space by light=光による拡張空間)を主な範囲とする。画面の外の出来事や風景であり、映像と照明の間の仕組みである。

下記の樹形図はWOWの仕事のカテゴリーを示している。「存在する映像」として映像を体験化した最初の作品《Motion Texture (2006) 》を機に、WOWの作品は、画面の中(=鑑賞する映像)から画面の外(=体験する映像)へと映像の領域を拡張した。 WOWの空間演出は、既存の空間に時間軸を加えた4次元の空間演出を得意とする。ただ通り過ぎるだけの場所に変化を与え、空間に新しい価値を与える事を特徴としている。

 

 

3つのMotion
下図は、Motion Graphics – Motion Texture – Motion Modalityの3つのMotionの関係を示している。それぞれの円の中心には、時間(time)があり、 ある対象をA地点からB地点まで動かす(or変化させる)ことで、対象に時間を加え、 その対象に命(=anima)を与える。Motion Graphicsは、グラフィックを動かす事で映像が生まれる。MotionTextureは、映像が環境に肌理(きめ)を加える事で、物質化し存在する。Motion Modalityは、空間の状態を変化させることで、動かない建築や空間に命(=anima)を与える。

※「Anima(アニマ)」はラテン語の「魂」「生命」を意味しており、無生物に動きを与えることで「生命を吹き込む=アニメーション」の語源とされている。

 


 

映像のかたち
Motion Modalityは、映像を光のマテリアルと捉える事で映像に《かたち》 を与え、光のふるまいを操作し、物質に映像を馴染ませ、 空間の様相(= Modality)を活性化する仕組みである。

 

 

まとめ
Motion Modalityは、空間の様相を活性化する仕組みであると同時に、空間における映像の様式・概念でもあります。公共・商業・文化施設やアミューズメント施設など、多様化し加速する建築照明のニーズに対し、映像のポテンシャルによってより豊かな環境を創出することを目標にしています。より詳細を知りたい方は、Contactフォーム からお問い合わせください。