Study

MEGAHOUSE

Concept

 

都市全体を一つの住宅として

今作品は、阿部仁史氏と本江正茂氏による「MEGAHOUSE」プロジェクトのナビゲーションムービーとして制作されました。MEGAHOUSEとは、都市全体を一つの巨大な「住まい」として成立させてしまうという、ライフスタイルおよび都市システムの提案です。
wowlabはこの作品で映像をモジュール化しながら全体を構成するという、実験的な映像制作を試みました。

 

阿部仁史

1962年宮城県生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校芸術・建築学部都市・建築学科学科長。東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻客員教授。代表作に「宮城スタジアム」「菅野美術館」など。

http://www.a-slash.jp/

 

本江正茂

1966年富山県生まれ。東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻准教授。システムデザイン作品に「時空間ポエマー」など。

http://www.motoelab.com/

映像をモジュール化する

都市の巨大なライフサイクルは、細分化して捉えると、個人個人の毎日の繰り返しが複雑に組み合わさったものです。今回の映像制作の鍵となるコンセプトは、この繰り返しの組み合わせを使って、さらに大きな繰り返し構造を生み出す事にありました。

それぞれのシーンを独立させ、映像の時間やサイズ、アニメーション位置等を規定し、ループ構造の中で完結させる。いわば一種のモジュールです。今回は全てのシーンは10秒で制作され、登場人物は左から現れて、右に消えていきます。この部品となる映像をパズルの様につなぎ合わせれば、自在にストーリーを構築することができるのです。

モジュールという部品で全体を組み立てる

 

モジュールをつなぎ合わせると、ユーザーが次々にシーンを渡り歩いている様に見えます。ユーザーは時間をずれて存在し、重なることなく「住宅」を共用していきます。ループ映像を組み合わせることにより、ループ構造を持ったさらに大きな世界を作り出すことができるのです。時間的スケールから切り離された映像の断片を、空間的に再配置するという新しい表現であると共に、密度の高い映像となっています。

製作プロセス

1.アイデアが生まれるまでの流れ

この映像作品が出来上がるまでに、多くのアイデアが出ました。そのなかでも実現したら面白そうなアイデアや、作品の完成までにどのような経緯を辿ったのかをご紹介します。

 

 

2.「予告編」案

まず最初は、映画の予告編のような映像作品を企画しました。MEGAHOUSEのキービジュアルとなるzapdoorを軸にストーリー展開していく、とても短い映像です。しかしこの表現では、印象を強く残す事はできるものの、全体のシステムを説明しきれないという事で没になりました。

 

 

3.「ダイアグラム」案

動くダイアグラムを作ろう。というアイデアも出されました。もともと固定する前提で作られたダイアグラムやピクトグラムを、「動く」事を前提として再設計したらどうなるのか?。最終案にも通ずるアイデアでしたが、円形のスクリーンに投影する事が困難なため、見送られました。

 

 

4.「インターフェイス」案

MEGAHOUSE Systemのサービスを仮想的に構築し、インターフェイスを新たな概念でデザインすることも企画しました。来場者に、ユーザーの一人としてMEGAHOUSEを利用体験してもらうことが目的となっています。しかしこのアイデアもデバイスの調達の関係で見送られる事になりました。

 

 

5.「モジュール」案

今回採用となったプランの原型となるアイデアです。映像をモジュール化することで、映像はパズルのように繋げて拡張する事ができるようになります。当初のプランでは様々なモジュールのつなぎ方を検討しました。

 

 

6.「モジュール」案 リング状のレイアウト

各モジュールが完成し始め、次にモジュールをどのように配置すべきかという議論になり、さらにいくつかのアイデアが出ました。これはその中でも最も有力だった案です。モジュールを立体的なリング形状に配置、外側の面にユーザ、内側にプロバイダ行動が見える構成になっています。

 

 

7.「モジュール」案  パノラマレイアウト

そして、いくつかのレイアウト候補の中から最終的にこのパノラマ案が採用されました。音楽のリズムと映像の展開もシンクロする事で、シンプルかつ実験的な表現になったと思っています。