Smart Canvas WOW 工場と遊園地 レポート2 (全3回)

Smart Canvas の取り組みは、2010年に東京ミッドタウンにて開催された「SMART CANVAS ×8 ”時って何だろう?” 8人のクリエイターによる、 新しい時の感じ方。」からはじまりました。WOWはこの展示を、時計を新たな視点で表現する実験的な位置づけとして捉え、WOWならではの世界観を検討しました。この時点で、工場と遊園地の世界観、表示部のグラフィックとバンドに描かれた線のつながりなど、骨子が完成しました。
その3年後、改めて商品化が決まり、新たに製品に向けたデザインをスタートしました。しかし実際に製品化するにあたって、様々なハードルを超えなければなりませんでした。
smacan_content
まず直面した問題は、仕様に合わせたコンテンツの改良でした。EPDという初めて扱うハードであったため、どのようにパーツを制作すべきなのか、技術的な内容を学びながら提案を繰り返し、最適なビジュアルを模索しました。また、小さなボディである以上、記憶できる画像のデータ容量に限界があります。限られた容量の中でいかにシーンを制作し、バリエーション豊かに要素を詰め込むことができるか、両社で試行錯誤を重ねました。
WOWがこだわったのは2つ。 ひとつは、表示部とバンドとのグラフィックのつながりです。コンセプトモデルでは、いつ見ても常に線がつながっている演出でしたが、製品化するにあたりWOWが考えていたコンセプトモデルのようなカメラワークが仕様上難しいと判明し、演出を再考する必要がありました。セイコーエプソンの方々とコミュニケーションをつづける中で、彼らが正時(12:00などその時刻ピッタリのタイミング)を特別な瞬間として捉えている事がわかりました。そこで、毎正時のタイミングから一定時間グラフィックがつながるようにし、正時に特別な意味をもたせました。
ふたつめは毎日同じ繰り返しにならないようにすること。 全く同じ繰り返しのビジュアルではユーザーが飽きてしまうため、そうならない工夫が必要です。しかし、前述のとおり記憶できる容量には限りがあり、毎日違うシーンの画像を盛り込むことは難しいことでした。
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そんな時エンジニアから、ある機能を追加したとの連絡を受けました。それは特定の日にちに特別な画像を描画できるスペシャルなレイヤー機能でした。結果、通常モードに特別なグラフィックをオーバーレイすることで豊かな変化をもたせることが可能となり、WOWは年間の行事や季節などにあわせて、スペシャルな演出を盛り込みました。もちろんグラフィックを付加することで通常モードが破綻しないように、レイアウトには細心の注意を払いました。
モアレ2
グラフィックも揃い始めた頃、次に訪れた問題はグラデーションをいかにEPDパネルの階調で美しく表現するかということでした。トーン処理した2階調のレイヤーを重ねて合成した場合、モアレが発生してしまうことがわかったのです。これは途中で登場する灯台のライト等の表現や、上記のスペシャルな演出でかかせないものでした。この問題は、可能な限りレイヤーを統合し1枚で表現すること、レイヤーが統合できない場合は一方のグラフィックを黒ベタにすることで、モアレが発生しないよう対応していきました。
トライアンドエラー
開発では、EPDパネルに表示・検証し、このような問題ごとに調整を行うトライアル&エラーを繰り返していきました。お互いに表現に妥協を許さない姿勢はハードではありましたが、デザイナーとエンジニアの双方が時にデザイン的な、時に技術的な解をお互いに模索して問題を解決していく良い協力体制が築けました。このような過程を経ることで表示や容量等の様々な問題をクリアしつつ、どのシーンを見ても違和感のない、使用者を楽しませるリストウェアが実現しました。
以上のようなやり取りをスタートから3ヶ月というスピードで行い、その後半年かけて商品が発売されました。